2008年9月の米投資銀行・リーマン・ブラザーズの経営破綻を端緒として、全世界的に急速かつ同時多発的に伝播した未曽有の金融危機は、実体経済にも多大な影響をもたらしました。
そして、今回の全世界的な金融危機を深刻化させ、金融市場の崩落を加速させた主要な要因として、2007年の米国サブプライムローン市場の破綻をきっかけとした証券化市場の混乱が、クレジット・デリバティブを利用したレバレッジ取引などとともに大きくクローズ・アップされました。
証券化に関して指摘された問題や懸念には、証券化商品の裏付資産の想定以上の劣化(劣悪な裏付資産が投資家への開示不足のままに証券化されていたこと等)、証券化商品の発行基準の安易な緩和、リスク転嫁の容易さに伴って生じたモラルハザード、過度に複雑化・高レバレッジ化した証券化商品の横行 、格付機関への過度の依存と格付けの信頼性の低下などが含まれ、 スキームの複雑性から理解が困難とのイメージがつきまとうこともあって、証券化への信頼が揺るがされました 。
しかし、私達は、流動化・証券化の意義や役割、有用性は、いまだ失われていないものと考えています。
金融危機以降、多くの企業が資金調達に苦慮し、資金繰りの悪化によって倒産の憂き目にあうケースが後を絶たない状況が続いていますが、このような事態を見ますと 、間接金融に過度に依存せずに多様な資金調達手段を確保し、低廉かつ円滑に資金調達を行うことが、企業活動の生命線であることを再認識させられます。
流動化・証券化は、本来、市場型間接金融の一つとして、その役割の一端を担うものであり、このスキームが現在でも有効であることは論をまたないところです。証券化市場に流入する資金フローの停滞に伴う流動性の低下といった問題も別途生じ得るものではあるものの、流動化・証券化の技術そのものは、資金調達主体の信用力に依拠せず、アセットの信用力に依拠した資金調達手法として有用性を有しているのです。そして、流動化・証券化の対象資産の審査を厳格に行い、法的安定性の高いスキームを採用する、あるいは、証券化商品の中身の透明性を高めるといった工夫をすることで、米国の証券化商品について生じた問題の多くが解消されるものと考えられます。
流動化・証券化協議会は、流動化・証券化を取り巻く環境が厳しい今こそ、流動化・証券化をめぐる諸課題に対する議論・検討を進め、政策提言等を行う活動を通じて、流動化・証券化の意義や役割、有用性を、広く、皆様に示すと同時に市場参加者を律しつつベスト・プラクティスの実現を図りたいと考えています。
流動化・証券化協議会